ビジネス系大学院(MBA・MOT)の動向

MBA、MOT、会計、法律などがビジネス系の大学院として挙げられる。会計大学院と法科大学院は別途特集を組んでいるので、ここではMBAとMOTを取り上げよう。

ビジネス系大学院として真っ先に挙がるのがMBA。「経営学修士」と訳されているが、経営学の修士課程とは必ずしもイコールではない。学問としての経営学ではなく、経営戦略や財務、会計、マーケティング、マネジメント、問題解決能力やリーダーシップの育成といった実践教育であり、プロの経営者(その卵)の育成を目的としている。弁護士や会計士などと違い、MBAそれ自体が何かの職種を保証するわけではない。が、米国企業では経営幹部の多くがMBAホルダーである。

日本ではバブル期に企業派遣で米国のビジネススクールへの留学が多く行われたが、年功序列型の日本企業はMBA取得者を生かすことができず、外資系企業へ転職してしまうことも多かった。そのため、一時期「MBAは役に立たない」という意見が企業側にあったことは事実だ。しかし、90年代半ば以降、あらためてMBAは評価されている。国際競争の激化によって企業が経営の専門家の必要性を痛感していること、成果主義や実力主義の普及でMBA取得者が活躍できる素地も整ってきたことによるものである。また、MBAといえば海外、特に米国のビジネススクールであったが、国内の大学院でも優れたMBA教育が行われるようになっている。最近では医療系MBAや環境に重点を置いたMBAなど、ビジネスシーンばかりではなく、公共の場で生かせるMBAも出てきた。大学院によってカリキュラムは異なるが、ケーススタディの重視はほぼ共通している。勉強はハードで英語も必須だ。培える人脈も含めMBAがビジネスエリートの有力なパスポートであることは間違いない。

近年、脚光を浴びているのがMOT(Management of Technology)、「技術経営」と訳される。MOTという言葉自体は「技術を戦略的に経営に活用すること」という意味。技術革新のスピードアップや研究開発の高度化・高額化を受け、経営能力だけではなく、経営の観点から技術を評価し、活用することの重要性を指し示す概念だ。こうした考えから技術と経営の両方が分かる人材育成の教育プログラムもMOTと称される。米国が発祥であり、日本では経済産業省の旗振りで急速に知名度が上がってきた。大学院としては工学系と経営系があるが、どちらにせよ、半導体やバイオ、ナノテクなどの最先端の技術動向や応用法とMBAのような経営戦略の両方を学ぶ。当然、各領域とも専門性は高く、文系理系を問わず、相当な勉強量が必要となる。ただし、MOTというはっきりとした定義は定まっていない。大学院以外でMOTコースを設けている機関もあり、MOTコースを設置する教育機関とともにMOT自体の本当の評価はこれからだ。