教育系大学院の動向

教育系大学院は、教育に関する諸学問をアカデミックに追究する大学院と、教員の高度な教育能力の育成を図る大学院とに大別され、教育学部を設置する大学や教育大学に設置されている。また、教員養成に特化した専門職大学院「教職大学院」が、早ければ2008年度にスタートする計画も進んでいる。

教員になるのに大学院に進学する必要はない。大学や短大などで教職課程を履修・修了すれば教員免許状は取得できる。これを開放制といい、戦後日本の発展に教育面で大きく貢献してきた。しかし社会が成熟し高度化するにつれ、教員のレベルを引き上げ、教育を高度化する必要が出てきた。実際、欧米の先進諸国では大学院卒の教員の割合が高い。日本では、本来なら全国各地に設置されている教育系大学院がその役割を果たすはずだったが、教員の教える能力を引き上げることより、学術を追究する傾向が強かった。教員の指導力不足が社会問題化されだしたこともあり、これが教職大学院の設置構想につながった。

教職大学院は、教員を“高度専門職”と位置づけ、「実践的指導力を備えた、新しい学校づくりの有力な一員となり得る新人教員」と「指導的教員・学校管理者となる上で不可欠な確かな指導理論と実践力・応用力を備えた、スクールリーダー(現職教員)」の養成を目的とする。そのため、実務家教員の割合を一般の専門職大学院より多い4割以上とし、理論と実践を融合した教育が行われる。標準の修業年限は2年で、10単位以上の実習が課せられる。学部の教職課程における教育実習が3〜5単位であることを考えると、実践面の教育がかなり強化されているといっていい。教育学部以外の出身者はもちろん、教員免許状を取得していない人にも広く門戸が開かれることになっており、教員免許状未取得者向けには3年コースといった対応策がとられるだろう。現職教員のみを対象とする教職大学院が登場する可能性もあるが、社会に出て教育の重要性に気づいた人が教員をめざすには、教職大学院は大きな選択肢の一つとなることは間違いない。
こうした動きを受けて、既存の教育系大学院の改革も進んでいる。ともすれば学術重視に偏りがちだった教育内容を、より実践的な教育内容にシフトさせる傾向が見られるようになっているのだ。そのため、今後の教育系大学院は、学術研究と教員養成の機能が明確に分けられるだろう。また、教員養成を主目的とする大学院においても、教員の能力一般ではなく、「教科の指導力」「学校の運営力」「こころの教育の実践力」など、より細分化した専門的なカリキュラムが導入されることが考えられる。

教員の免許制度が改正される可能性があることにも注意しておきたい。これまでの教員免許は終身有効だったが、新しい免許制度では10年程度の有効期限が設けられ、更新によって免許を延長していく方向で議論が進んでいる。教員志望者には、これまで以上に強い目的意識と、相応の自己研鑽が求められることになるだろう。