大学院進学ガイド どんな大学院があるの?

従来の大学院は、主に学部卒業生がさらに専門的な研究を行う「研究者養成の場」という面が強いものでしたが、社会的ニーズの変化に基づいて2003年度以降に設立された「専門職大学院」は、プロの養成機関ともいえる場であり、高度かつ専門的な職業人養成を目的としています。
どういうことを学びたいかによって、大学院は研究者養成と高度専門職業人養成の2種類に大別されるともいえます。
また、大学院は運営方法や講義方法によっても、特徴のある形態があります。

学びのタイプは、大きく分けて2つ

研究を重ねるには一般の大学院

専門分野の研究を重ねていくのが基本であり、一般的には、修士課程(博士前期課程)、博士課程(博士後期課程)に分かれています。
主眼は研究者養成ともいえます。
修了後に企業に就職する人もあれば、そのまま大学院に残って研究者をめざす人もあります。

実務能力を磨くための専門職大学院

ビジネススクールのような経営大学院や、アカウンティングスクール(会計大学院)、法科大学院、教職大学院のように高度で専門的な職業能力をもった実務家の養成を目的としている新しいタイプの大学院をいいます。国家資格取得と連動した専攻内容の大学院もあります。
現場で実際に活躍するスペシャリストを教員として招くなどして、実践に即した知識や技能を学生たちに修得させることをめざしています。

例えばこんな専門職大学院があります

法科大学院・・・法曹養成に特化した実践的な教育を行う大学院。修了者は新司法試験の受験資格が与えられる。
会計大学院・・・財務会計の専門職大学院で、修了者は公認会計士試験の短答式試験の一部科目が免除される。
MBA大学院・・・日本や海外のMBA(Master of Business Administration)を取得し企業経営のプロをめざす大学院。
MOT大学院・・・技術を含めて総合的に経営管理を行い、経済的価値を創出していく経営の知識を学ぶ大学院。
教職大学院・・・高度な専門性と実践力を身につけたスクールリーダーの養成を行う大学院。
臨床心理系大学院・・・臨床心理士を養成する大学院。修了すると臨床心理士資格試験の受験資格が与えられる。
その他にも、公務員など行政に携わる者を対象とする公共政策系大学院、医療経営や保健・医療分野における専門家養成を目的とする医療・公衆衛生系大学院、さらに看護・福祉系大学院、理工系大学院、芸術・家政系大学院などがあります。

運営、学び方が異なる大学院

最初の一歩にもちょうどいい 公開講座

公開講座(オープンカレッジ)には、いくつか種類があります。一般の社会人を対象に一つのテーマに沿って数回の講演会や講義を行う場合もあれば、1回で終了する講座もあります。中には通常の授業を公開している場合もあります。
基本的には誰でも受講できるので、気になる大学院や教授、テーマの授業を受けて、学びながら内容を確認するのにも便利です。

3年以上かけて学位取得 長期履修制度

職業や家事に従事しながら、入学希望者のライフスタイルに合わせて、大学院の入学から修了までの履修期間を最初から長期に定めて履修する制度。職業を有するなど、勉学時間が十分確保できないなどの事情がある場合には、2年間に設定されている教育課程を4年間を上限として履修する計画を立て、長期履修学生として許可を受け在籍することができます。
この制度は、新入生だけでなく、在籍中の学生が事情変更により適用される場合も、長期履修を許可された人が、短縮を申請する場合にも適用されます。また長期履修制度を利用する条件が、職業を有しているという場合もあります。なお、長期履修学生の授業料は、履修期間にかかわらず原則として通常の在学期間分になります。すなわち修業年限が2年で、長期履修制度を利用して4年間を在籍期間とするのであれば、2年分の学費を4年間で支払うことになります。大学院によって、長期履修制度の対象になる条件は異なります。

長期履修制度のあるオススメの大学院

正規入学しないで正式受講 科目等履修生・聴講生

科目履修生も聴講生も正式に大学院に入学することなく、自分の受けたい科目を履修できる制度です。大学院ごとに制度は異なりますが、科目等履修制度においては履修した単位を将来、正規に入学したときに当該大学院の修了要件単位として認められる場合もあります。必要なことだけを学びたいときに利用するのもよいでしょうし、将来の大学院進学を視野に入れて、まずは受講してみて大学院選びの参考にするにも便利な制度です。
最近では実践力を養うためのプログラム、例えば中小企業や地域経済・コミュニティー社会で活躍する人を対象に、中小企業や地域経営に関するプログラムを提供している大学院もあります。

科目等履修生・聴講生制度のあるオススメの大学院

1科目からも学べる 放送大学大学院

通信制大学としてユニークな存在の放送大学は、2001年に開設し、2002年4月から大学院(修士課程)の学生を受け入れています。放送授業を中心に自宅で学習し、全都道府県にある学習センターで学習指導や相談を受けたり、図書の閲覧ができます。
6つのプログラムを設けており、研究内容に応じて他のプログラムで開講されている科目を学習計画に組み込めます。また、1科目からでも学べる「修士選科生・修士科目生」として入学することもでき、さらに修得した単位を修士要件として認められるので、長期計画で修士を取得することも可能です。

通学制と同じ学位を取得 通信制大学院

1999年度から設置を認可された大学院です。在宅でも大学院の教育を受けられることが、通信制大学院の大きなメリット。同時に入学試験も通学制と同等のところが少なくないようです。
授業は、在宅学習による通信指導とスクーリング(面接指導)が中心となります。通信指導では、受講科目の課題に対してレポートを作成して提出します。スクーリングとは学生の休暇を利用した面接指導のことで、週末や夏季など、年間を通して1週間程度行われます。
近年は、インターネットによる、e-ラーニングと呼ばれるメディア授業が行われている大学院もあります。また、e-ラーニングにより、スクーリング(面接指導)なしに修了できる大学院もあります。
学費は各大学院によって異なりますが、一般的な私立大学の通学課程と比較すると格段に安価です。ただし、一部、通学制と同等の学費の大学院もあります。

通信制のあるオススメの大学院

短期集中で履修 1年制大学院

通常、大学院修士課程の標準修業年限は2年とされています。それを1年という短期間で履修できるようにしているのが、1年制大学院であり、社会人を対象としている専門職大学院に多く見られます。
大学院によっては同じ研究科に2年制と1年制を設けていたり、必要単位を修得した場合は1年でも修了できるなど、さまざまな制度を設けています。社会人が短期集中で学位を取得して職場復帰を考える場合、とても利用しやすいしくみです。

大学院のみで成立 独立大学院・独立研究科

学部組織を持たずに、大学院だけで構成されている大学院大学のこと。
その多くは学際的な分野を対象として、ユニークな研究を行っています。また独立研究科というのは、学部組織を持たない研究科のことで、複数の学部が共同で運営している場合が多いようです。いずれにしても、多種多様な分野で先端知識を持った研究者が集まるため、自分の研究の幅が広がるという利点があります。独自の研究をめざしたい社会人は、検討してみる価値があるでしょう。