先輩の声

人間社会研究科 福祉社会専攻
(修士課程修了)
田中香さん
地方公務員(福祉専門職)として、子どもから高齢者まで様々な人々の生活問題や心の悩みに向き合う。平成28年、地域包括ケア部署で高齢者見守りネットワークを担当、多様な主体が協働した社会課題の解決に関心が強まり転職を決意。現在は社会福祉士養成課程(通信教育)の専任教員。
学問の広がりが期待できる環境
数ある大学院の中から本研究科・専攻を選ばれた理由をお聞かせください。
大学時代から福祉を学び、長く福祉現場での実践も行ってきましたが、複雑な社会になっていくにつれ、福祉的な枠組みだけで地域課題の解決を行うことに限界を感じてきました。さらに地方が抱える人口減少やインフラ縮小などの地域課題は、特に人々の生活に深刻な影響を与えており、彼らが困窮していく現状を知るにつれ、地域全体で、福祉だけでなく多様な関係者と協働して課題解決に向かう必要性を、地方公務員としても実感してきました。県庁で高齢者見守りネットワークを担当した際には、協定締結や意見交換会など様々な民間事業者と協働させていただく機会がありました。民間企業の視点やノウハウが入ることで、地域の意識がより高まり、地域福祉の向上に貢献していただくことを目の当たりにし、多様な主体とも関わり合いながら福祉課題に取組むことは福祉社会への理解を促す手法として価値があると考え、大学院で研究したいと考えるようになりました。本専攻は、ソーシャルワークだけでなく、コミュニティ領域も含めて学べることから、福祉制度の狭間や福祉周辺領域と融合した研究など、学問の広がりが期待できる環境であることが大変魅力的だと感じました。
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学生の状況に応じた柔軟な配慮
実際に入学してみて、印象的だった点、良かった点をお聞かせください。
授業は、平日だけでなく土曜日や夜間、多摩キャンパスだけでなく市ヶ谷キャンパスでも開講しているので、社会人でも学びやすい環境設定となっています。仕事との両立で課題提出が間に合わないなど悩むことがありましたが、先生方とのコミュニケーションはとても良好で、オンライン併用や学生の学びの進捗に応じて資料を共有してくれるなど、学生の状況に応じた柔軟な配慮をしていただきました。所属ゼミは本研究科の中でも所属する学生数が最も多く、学生相互のつながりも強いゼミです。長野での夏合宿では、それぞれの研究について活発な議論や意見交換を行いますが、研究の進め方に悩んでいた時も博士課程や修了生から具体的な助言をいただき前向きになれたことを思い出します。また、本研究科の講義は、首都圏の大学院社会福祉学専攻課程協議会からの聴講院生、本学の他研究科の学生など、様々な方々が受講しており、有意義な議論ができ知見が広がりました。私も、地域づくりなど他研究科の授業も履修しましたが、視野を広げて勉強することができたことで、より福祉への理解が深まりました。何よりも、仕事以外の大学院での出会いは新たな発見も多く、ミドルエイジ世代にとって今後のキャリアを見つめ直す機会ともなりました。
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社会人の強みを生かす
仕事と学業の両立についてお聞かせください。
私は教員なので、上司や同僚が応援してくれ、職場の理解がある中で学べたことに感謝しています。それでも、仕事と両立しながらの大学院生活は大変でした。土日の仕事も代休をやりくりして授業に出席し、仕事が終わり家事を済ませから、夜中や早朝に勉強して、また仕事に行くといった日常を送っていました。研究が本格化し、調査が始まると、さらに時間がなくなっていきました。どうやって研究のための時間を捻出するか、いかに効率的に使うか、時間のやりくりにとにかく追われていたように思います。通勤時もスマートフォンで論文を読み、外出時も図書館に寄って文献を探したり。パソコンは常にリュックに入れて、隙間時間に論文を少しずつ執筆しました。こうした小さな積み重ねのおかげで、長期履修制度で3年で修了する予定のところを2年で修了することができました。研究がうまく進まず、悩む時期もありましたが、先生方の指導のおかげで、気持ちを切り替え、進めていくことができました。社会人学生は仕事や家庭との両立が課題となりますが、人生経験が豊富な社会人だからこそ、計画性や効率性のノウハウがあり、歳を重ねた分の柔軟さもあります。社会人の強みを生かしていけば、両立は十分可能だと思っています。
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学業と仕事との両立が可能
同じ道をめざす人へメッセージをお願いします。
社会人の日常は、意外と狭い世界です。子育てが落ち着き、気づけば私の日常は仕事と家庭だけとなっていました。そんな日常に焦りを感じる自分に気づき、私が長く関わってきた「福祉」をあらためて体系的に理解し、実践を通して感じてきたことを明らかにしたいと思い、大学院をめざしました。人々がますます孤独孤立に向かう現状を目の当たりにする中で、次第に福祉だけでは解決できないことが増えていることを実感してきました。社会の変化に敏感になり、隣接領域ともうまく関与しながら実践に導くことが必要です。本研究科は、まさにそれを体現できる理想的な研究科であり、自分の思い描く自由な学びが可能となりました。そして、修士課程での学びや研究を終えた今、私の「問い」は、学問にこそ答えがあったのだと深く実感しています。30年ぶりに学生として学び直し、知見や人脈が広がる時間は本当に贅沢な時間でした。同じ社会課題に関心がある仲間にたくさん出会い、研究を通して、新しい目標もできつつあります。生涯をかけて学び続けていくこと、これこそが法政大学が掲げる「自由を生き抜く実践知」であり、社会に対しても新たな価値提供につながるものと確信しています。
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