先輩の声

心理学研究科
臨床心理学専攻 修士課程
川村隆之介さん
教員をめざし東京成徳大学に入学後、志望動機となった不登校経験やそのときの出会いを振り返り、「本当にやりたいことは不登校児を支えること」だと気づく。進路変更を決意し、同大学応用心理学部臨床心理学科に再入学。将来は公認心理師国家資格を取得し、不登校児の支援にあたりたいと考えて大学院に進学。
不登校支援をめざし、教育系の心理学に強い大学院を志望
この研究科を選んだ理由を教えてください。
不登校児を支えたいという目標を持って、「教育系の心理学」に強い東京成徳大学大学院心理学研究科に進みました。学校心理学や児童期〜青年期の心理学を専門とする先生方の層が厚く、講義の中では子どもに対する関わり方や、その際の心理職としての在り方、連携の仕方をご教授いただきました。このことからケースバイケースでその時々に合った対応を試行錯誤することの重要性を学べたことは私の基礎となっています。
また、学部時代に心理学系の学科を受け直そうと考えたときに、同じ手話サークルに所属していた臨床心理学科の先輩たちが「うちの先生方は優しいよ」と勧めてくれたこともきっかけになりました。大学院では実習が増え、現場で課題感を抱くことも多くなります。その都度、先生方に助言をいただきやすい環境があったので、悩みや迷いもプラスの経験に変えることができました。
手話の体験に基づく研究テーマで修士論文に取り組む
研究テーマとその内容をお聞かせください。
修士論文は自分の視点でテーマを見つけたいと考え、手話サークルの経験を生かし、「難聴者と健聴者の会話のズレ」に注目しました。手話は筆談に比べてコミュニケーションのスピードが速く自然に会話できますが、細かいニュアンスが伝えにくいと感じることもあったからです。難聴者と健聴者が会話を通してもっと深く交流できたらという思いをもとに、手話による会話ですれ違いが起きた場面から、その要因、すれ違いが正された発話や表現を分析して、会話でのすれ違いがどのように起こるのか・どのように直されるのかといった特徴を考察しました。一見、心理支援とは関係がないようでもありますが、クリニックでの実習で聴覚障害のある方が心理検査を受けに来られた際に、手話のスキルと研究成果が役立つ場面がありました。心理支援の専門家として、多様なケースに対応できる知識を持つことは決して無駄にならないと感じています。
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子どもの変化のプロセスと学んできた知識が結び付いた
修士課程の学びの成果について教えてください。
修士課程の2年間は、実践が大きなウェイトを占めていました。教室での心理支援実習や模擬カウンセリング実習を経て、1年次後期から半年間の学校における現場実習を行い、2年次には別の学校で1年間を通した現場実習に取り組みます。私は不登校の児童が通う適応指導教室と、私立の不登校特例校で実習を行いました。継続的に通うことにより、子どもたちの変化のプロセスに立ち会うことができます。その過程では、これまで学んできた理論や概念が現実と結び付き、心理支援の知識を実際に使う場面が数多くありました。
また、保健医療分野での現場実習では、クリニックで心理検査を担当させていただきました。学内にある「心理・教育センター」で、実際のクライアントを担当し、カウンセリングや子どものプレイセラピーを行い、先生方にきめ細かな指導を受けたことも貴重な経験でした。振り返ればハードな毎日でしたが、院生という立場で幅広い現場体験ができ、学びが凝縮された2年間だったと思います。
スキルの研鑽を目的に、2つの職場で仕事をスタート
修了後の進路と今後の目標をお聞かせください。
4月から、実習先であった不登校特例校に週2日と、未就学児の発達支援を行う療育施設に週3日勤務することが決まっています。非常勤で2つの職場をかけ持ちすることになりますが、早い時期に異なる職場や領域を経験することで、スキルを研鑽するという選択は心理職においては珍しくないようです。私も、不登校特例校では児童・生徒と関わり、療育施設では幼児やその保護者の支援に携わりながら、多様な角度から物事を見る目を養い、将来的には幅広いアプローチで不登校児の心理支援ができる専門家になりたいと考えています。
心理支援の専門家だからこそ、周りの人との交流が大切
同じ道をめざす人へメッセージをお願いします。
心理職は「感情労働」なので、自分の心のコントロールが必要とされます。学部でも「セルフケア」の授業でストレス対処法などは学んできましたが、実際の現場実習では教科書通りにはいかないことばかりでした。そういうときには自分で抱え込まず、先生方や心理職に就いている先輩方、同期の院生など、人に相談することを心がけていました。特に私の学年は約半数が学外からの入学者で、年齢も幅広く、いろいろな職業経験者がいたので同期の考え方に学ぶことも多かったです。
また、心理職をめざす仲間との交流だけでなく、心理学科ではない友人との関わりも大事にしていました。心理職である前に、人として一般的な考え方を忘れず、自分として在ることが、支援をするためにも自分のためにも必要だと思います。皆さんも、今持っている志を大切に、自己を見失うことなく邁進していってください。