大学院進学ガイド スキルアップの方向性

学部生の進学だけでなく、社会人の大学院生が増加傾向にあります。背景にはスキルアップやキャリアアップ、あるいはキャリアチェンジをめざす大学院進学があります。
実務としての技能や知識を修得することを目的とする場合もあれば、資格あるいは資格取得のための受験資格を得るためなど、その目的はさまざまですが、大学院がキャリア形成に役立つ選択肢の一つとして定着してきているようです。

専門性を磨く、キャリアアップ講座

大学院のキャリアアップ講座は、大学が開講するものに比べ、より専門的、実践的になっています。したがって、講義を理解できるかどうかをチェックするため、事前に、受講希望者に簡単な学力審査を行う大学院もあります。

語学講座は日常会話をある程度こなせる人向けになっています。そのために、ビジネスの場で意見を明確に伝えたり、人前でスピーチを行ったりできるよう、具体的な表現法を学ぶ機会が増やされ、高度な専門書を読解する講座も設けられています。ビジネスマン向け講座は、専門知識を教授すると同時に、レポートや討論を通じて、問題発見・解決力、コミュニケーション力などを養えるようプログラムされています。また、教育や医療など、専門職の社会人向けに、仕事に関連する理論を系統立てて教授し、実践へと還元するための講座も多く開講されています。

キャリアアップ講座の多くは単位修得の対象とはなりませんが、一部の大学院・講座では、科目等履修制度の中に組み入れ、単位を修得できるようにしているものもあります。

資格を取得してキャリアップ

景気の安定、不安定に左右されない資格取得を意識している人は、学生・社会人を問わず少なくないでしょう。
大学院を修了し得られる資格には、資格そのものを取得できるもの、試験科目を免除されるものがあります。

取得できる注目の資格・学位

<臨床心理士>

臨床心理士は、臨床心理学の知識や技術を用いて心理的な問題を取り扱う「心の専門家」であり、文部科学省が認可する財団法人日本臨床心理士資格認定協会の資格試験に合格することが必要です。そして臨床心理士の受験資格は、協会が指定した大学院の修士課程を修了することによって得られます。

ただし第1種の指定大学院を修了した場合は臨床経験なしで受験できますが、第2種の指定大学院を修了した場合には、心理臨床現場で1年以上の実務を経なければ受験できません。
さらに、2005年度からは指定大学院の中でも特に専門家の養成に特化した専門職大学院が開設されています。専門職大学院を修了すると、認定試験の1次試験のうち小論文が免除されます。
なお、協会による大学院指定は6年間であり、それを過ぎると再度審査があります。資格目的で進学する人はどこが指定大学院か、チェックしておくべきでしょう。

また、臨床心理士の資格は、5年ごとに更新する必要があります。

学位取得後の仕事

スクールカウンセラー、福祉施設のカウンセラー、医療現場の心理士、企業内のカウンセラーなど

臨床心理系のオススメ大学院一覧はこちら

<MBA>

Master of Business Administrationの略で、日本語では、経営学修士と呼ばれています。ビジネススクールで実施されるMBAプログラムは、マーケティングやファイナンス、組織論などを幅広く学び、経営全般の知識や能力を備えた人材を送り出すことを目的としています。
かつて、MBAを取得するためには、アメリカの大学院に留学するのが一般的でしたが、ここ数年、日本国内でもさまざまな大学院でMBAプログラムを実施するようになっています。授業の受け方も、必ずしも平日昼間のみというわけではなく、夜間や通信を利用できるようになっていて、働きながら学位を取得することも可能になりました。

学位取得後の仕事

MBAを取得していないと就けない仕事というのは特にありませんが、この学位を持っていれば経営のプロの予備軍とみなされることになるでしょう。学位取得までに論理的思考能力やプレゼンテーション能力、人脈などを得ることにより、企業の経営部門で働いたり、社内ベンチャーを任されたり、コンサルティング関連の仕事をするチャンスを得やすくなると考えられます。

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試験科目免除を受けられる資格

<税理士>

確定申告や青色申告の承認申請や税務調査の立ち合いなど、税務代理、あるいはそれらに必要な税務書類の作成、または税務相談にのるなど、税務に関してさまざまな業務を行うのが税理士。税理士になるための試験は、全11科目中、5科目合格しなければなりません。
大学院で税法に属する研究を行い修士の学位を得た場合、税法3科目のうち1科目の試験が、同じく大学院で会計に関する科目の研究を行い修士の学位を得た場合、会計科目のうち1科目の試験が、国税審議会の認定を受けた場合に免除されます。ただし、申請する時点までに、申請する分野で1科目(会計科目の研究認定を申請するなら会計科目、税法科目の研究認定なら税法科目)、合格していなければなりません。

資格取得後の仕事

税務書類の作成や税務代理、税務相談といった税務業務は、税理士だけが行うことができる独占業務です。さらに、企業会計に関する会計帳簿の記帳や決算書作成、経営改善や財務会計のアドバイザー的役割などが考えられます。
また、独立開業する人もいれば、税理士事務所に勤務する他に、その知識を一般企業や金融機関、コンサルティングファームなどで生かせる場合もあります。

<公認会計士>

会計の専門家として、企業の会計監査業務および経理・財務、税務業務、さらには会計に関して企業経営のコンサルティングを行うなど、業務内容は多岐にわたります。
公認会計士の試験は、短答式と論文式による筆記試験で、学識およびその応用能力を測ります。短答式では、財務会計論、管理会計論、監査論、および企業法について行い、このうち企業法を除く3科目については、会計専門職大学院で必要な単位を修得して当該学位を授与されると科目免除となります。 免除を受けるためには審査会事務局に公認会計士試験免除申請書類を提出し、審査を受ける必要があります。

資格取得後の仕事

会社が作成した財務諸表が適正であるかどうかを述べる監査業務は、公認会計士の独占業務です。さらに財務諸表を作成したり財務や会計に関するアドバイザー的役割を担ったり、コンサルティング業務や税務業務(税理士登録が必要です)なども行います。
独立開業や、監査法人への勤務、また一般企業や金融機関、コンサルティングファーム、ベンチャー企業に勤務するなど、資格と知識を生かす場は多様です。

<弁理士>

弁理士とは特許権、実用新案権、意匠権および商標権といった、知的財産に関するさまざまな申請手続きの代行や調査、コンサルティングを行う専門家のこと。弁理士法改正により、従来は弁護士でないと業務として扱えなかった知財紛争処理など、一部民事訴訟について弁護士と共同で代理人として訴訟することが認められました。これにより業務の範囲が広がり、幅広く活躍できるようになりました。
弁理士試験は短答式筆記試験、論文式筆記試験、口述試験の3つに分かれています。大学院で理工系の研究をして修了した場合、工業所有権審議会の認定を受けることによって論文筆記試験が免除されます。

資格取得後の仕事

特許権・実用新案権、意匠権、商標権の取得、特許庁からの出願拒絶に対する対応や、さらに財務諸表を作成したり財務や会計に関するアドバイザー的役割を担ったり、コンサルティング業務や税務業務(税理士登録が必要です)なども行います。
独立開業や、監査法人への勤務、また一般企業や金融機関、コンサルティングファーム、ベンチャー企業に勤務するなど、資格と知識を生かす場は多様です。